紙飛行機の話
5thライブ「Next SPARKLING‼」を迎えるにあたって、劇場版で度々登場した「紙飛行機」のメッセージ性について、自分なりの考えをまとめておこうと思います。
ラブライブ!サンシャイン!!における紙飛行機とは何なのか。
結論から言うと、
- 紙飛行機は3つある
- 千歌が投げた紙飛行機は今もどこかにある
という解釈をしています。
紙飛行機の分類
まずは作中で紙飛行機が登場するシーンをまとめてみます。
①2期1話「ネクストステップ」冒頭 夢の中
②2期OP 未来の僕らは知ってるよ
③2期1話「ネクストステップ」Bパート 夢の中
④2期1話「ネクストステップ」Bパート 学校
⑤2期13話「私たちの輝き」 冒頭・Bパート
⑥劇場版 冒頭
⑦劇場版 僕らの走ってきた道は… 劇中
⑧劇場版 Brightest Melody後 キセキヒカル前
⑨劇場版 NEXT SPARKLING!!前
⑩劇場版 エンドロール後
そしてもうひとつ、まだ紙飛行機になる前の形。
⑪2期12話「光の海」秋葉原UDX前
以上の合計11回登場している紙飛行機ですが、分類してみると実際には3種類の紙飛行機が劇中に存在していると考えられます。
Ⅰ. 子供千歌が投げた紙飛行機
アニメでは2期1話とみら僕劇中のみに登場しておりアニメだけだと何処から来て何処へ行くのか分かりませんでしたが、劇場版では冒頭で子供千歌が投げたシーン及び物語の中を飛ぶシーンが追加されました。
オリジナルサウンドトラックのトラック名
- 夢を飛ぶ紙飛行機(①2期1話)
- 想い出を飛ぶ紙飛行機(⑥劇場版冒頭)
にある通り、夢や想い出といった高海千歌の心象世界にも登場しています。あとこの紙飛行機を投げる時はいつも子供になってるし紙飛行機は鳥になります。
この紙飛行機を時系列で並べ替えると、
⑥劇場版 冒頭【投げる】
①2期1話「ネクストステップ」冒頭 夢の中
②2期OP 未来の僕らは知ってるよ
③2期1話「ネクストステップ」Bパート 夢の中
④2期1話「ネクストステップ」Bパート 学校
⑦劇場版 僕らの走ってきた道は… 劇中
⑧劇場版 Brightest Melody後 キセキヒカル前
⑨劇場版 NEXT SPARKLING!!前【落ちている】【投げる】
という流れで、千歌が子供の時に投げて虹を超えるくらい飛んだまま⑨劇場版ラストの浜辺に辿り着き、また千歌の手によって投げられました。この紙飛行機は後述するⅢの劇場版ラストの紙飛行機とは本質的に別物なので、このIの紙飛行機は今もまだ虹を超えた先のどこかを飛び続けているか、もしくは2019年6月8日のメットライフドームあたりに落ちているんじゃないかと思います。
Ⅱ. 2期13話の紙飛行機
これが一番シンプルで物理的な紙飛行機。
2期13話で千歌が浜辺から投げて学校に行きついたものです。
⑤2期13話「私たちの輝き」 冒頭・Bパート【投げる】【落ちる】
このシーンでは千歌の母の口から「昔の千歌はうまくいかないことがあると人の目を気にして本当は悔しいのに誤魔化して、諦めたふりをしてた。紙飛行機の時だってそう。」と、⑥の子供千歌が紙飛行機を投げるに至った時空が示唆されています。
Ⅲ. 0の紙飛行機
⑩劇場版エンドロール後、「はやくはやく」「ちょっとまって」「きたー!」と2人の少女の声が聞こえるシーンに突如として出現した、浜辺に書かれたAqoursの文字と東京で0票だった時の紙で折られた紙飛行機。2人の少女については舞台挨拶で酒井監督によって補足されています。
せっかくの機会なのでお話しすると、ラストシーンで女の子が2人登場しましたよね? TVアニメ2期の第7話で入学希望者が98人でしたが、あの2人を加えると100人になります。だからあの瞬間、千歌たちの夢は結実した――そんな願いをあのシーンに込めました。
確かに「小さい頃よく海水浴で来たなー。」って言ってるんですよね。沼津周辺が地元or出身という設定なのでしょう。
あの「Aqours......0」が印字された紙は⑪2期12話「光の海」秋葉原UDX前で千歌が「勝ちたい」という意思を手に入れると同時に手放した紙です。秋葉原UDXで解き放たれたあの紙が何らかの理由で形を変えて劇場版のラストで浜辺に至ったとするならば、紙は秋葉原で「浜辺の2人」の手に渡り、浜辺で投げられたor秋葉原から浜辺に向って投げられたと考えることが出来るでしょう。ラブライブ決勝で「WATER BLUE NEW WORLD」が披露されたあの日、秋葉原にいた2人といえば…
まぁこの描写があっただけで劇場版ラストの少女がこの2人かは分かりません。解釈を限定しないように構成されているのであくまでも仮説です。
そういえば、高海千歌も 「秋葉原で風に飛ばされた紙を拾った」のがすべての始まりでしたね。
この紙飛行機が登場する劇場版の最後の海のシーンはレンダリングに1400時間かけていますし、舞台挨拶やスタッフトークでわざわざ説明するほどなので、それなりのメッセージや設定が込められているのだと思います。
杉山:レンダリングというのは、録画した番組をDVDなどにダビングするような工程と考えていただければと思います。それが大体4分くらいのシーンに対して、1400時間かかりました。それでも、Aqoursの物語の締めに海をもってくるのならば最高のものを用意するべきだと考えて、時間を費やしています。
紙飛行機の解釈
アニメ2期終了時点では「紙飛行機」=「心」だと思っていました。
輝きに向かおうとする心。その心という解釈に、意思決定と行動選択、そして時間と空間という概念を加えて再び考え直すと、劇中の紙飛行機は「世界線」に近い概念なのではないかと思うようになりました。子供の頃に投げられ、千歌の夢の中や物語世界を飛び続け、その果てにあるただ一点に辿り着く空間的・時間的な一本の軌跡。きっと夥しい程のイフとバッドエンドがあった中で辿り着くたった一つの結末。飛行機を投げるということは世界線を決めるということのようにも思えます。
あるいはアニメで描写したかったのは「紙飛行機を投げたから飛んでいる」という単なる因果関係ではなく、「(あなたの)紙飛行機は飛んでいる、それはもう投げている」という気付きを与えるためのメッセージなのかもしれません。
『ラブライブ!サンシャイン!!』って、世界はいつもあるがままで変わらないように見えても、自分が変われば世界は変わるってことに気づく話なんです。
劇場版パンフレット 酒井監督インタビュー
「WONDERFUL STORIES」と「僕らの走ってきた道は…」
2期13話のと劇場版の時系列について、
・2期13話Aパート
↓
・劇場版本編
↓
・2期13話Bパート「WONDERFUL STORIES」
↓
・劇場版オープニング「僕らの走ってきた道は…」
という叙述トリックになっている可能性があると思っています。2期13話Bパートで旅立つ3年生の私服を見て思いついただけの単なる仮説ではありますが、既に私と同じことを考えている人がいらっしゃいました。こちらでかなり細かく考察されております。
私はもはや2期13話の「WONDERFUL STORIES」と劇場版OPの「僕らの走ってきた道は…」及びそれまでの一連の流れは、時系列の外にある公式MADくらいに今では解釈しています。
物理的な現実感と自分の心の現実感はちょっと別なんです。 あれは千歌1人の心の動きではなく、9人全員、浦の星の生徒全員の心の動きが、千歌に要約されているんです。それをあのような映像で表現しています。
(中略)
第13話のストーリとしては、千歌が「最初からあったんだ」と自分で答えを語るという構成にしましたけど。あの時起こっていることはひょっとしたら……。
ラブライブ!サンシャイン!! TVアニメオフィシャルBOOK2 酒井監督
ひょっとしたら「WONDERFUL STORIES」と「僕らの走ってきた道は…」の時系列が、劇場版の後あるいは別次元の公式MADだったとしても
- 紙飛行機が3つあること
- 今もⅠの紙飛行機がどこかにある
という仮説が否定される訳ではありません。
ついでに酒井監督の言葉を借りるならば、Ⅰの紙飛行機が飛んでいるのは「物理的な現実」ではなく「心の現実」なのでしょう。そしてその「心の現実」は、5thライブによって「現実の現実」になろうとしています。
5thライブに向けて
3rdライブがアニメ2期をテーマにしたもの、5thライブが劇場版をテーマにしたものであるとするならば、3rdツアーが始まったちょうど1年後、ちょうど同じ場所で5thライブが開催されるのが偶然と思えませんでした。さらに3rdライブの最後の曲が「WONDERFUL STORIES」だったのも、もしかしたらこの5thライブを見据えて「僕らが走ってきた道は...」へ1年越しに繋げるためのセトリだったのではないかと疑ってしまいます。
いっぱいの思い出からは 流れるメロディー
あたらしい夢が聞こえる いつかまたはじまるんだよ
次のDREAMING DAYS
この歌詞で幕を閉じた 3rdライブ。 私にとっての「次のDREAMING DAYS」は、まさにこの5thライブ「Next SPARKLING!!」です。
おそらく劇場版で演じられた「Believe again」vs「Brightest Melody」というラブライブ決勝の延長戦も観ることができるでしょう。私も5thライブをただ単体として楽しむというよりは、やはり無意識のうちにこれまでのストーリーの延長線、3rdライブの延長戦として参加してしまうのではないかと思っています。セトリのストーリー性もさることながら、メットライフドームなんてどうやってもあの日の伊波さんのバク転を思い出すでしょ。そういう意味では5thからAqoursのライブに参加する方の新鮮な感想も聞いてみたいですね。
あと何度、Aqoursのナンバリングライブに参加できる機会が来るか分かりません。もしかしたらこれが最後かもしれない。μ'sが私にたった一つ与えてくれた教訓を忘れたくない。
始まったら終わってしまう。これまでのナンバリングライブがそうだったように、5thライブはひとつの死です。こんなにも分かりやすく死が待ち構えており、私はそれをまた乗り越えなければならない。今の私に出来るのは5thライブに全力で挑むことだけです。機会を失ってから後悔することがないように、積み重ねた想いや想い出を、現実も過去も未来も、持ち得る心の何もかもを砕いて燃やして輝きます。それが私にできる唯一の存在証明だから。