伊波杏樹さんソロイベント「Super-pouvoir」感想

会場に入ってからイベントが始まるまでの間、私は伊波杏樹さんの「道」について考えていました。

 

伊波さんは信念を持ってファンと一定の距離を置き、またファンだけでなく演技する役との距離感においても一歩引き、あれだけ感情をのせた演技をされるにもかかわらず役に呑まれるほど依存せず、また演じた役を肩書き代わりにしない人です。

伊波杏樹はひとりの役者であるという強い主張を感じます。

彼女の歩む道は役としてではなく役者としての道であると。

彼女自身はファンを救うでもなく導くでもない。

ただ己の道を歩むのみというのが、私の印象です。


その姿を例えるなら、Fate/Zeroで征服の覇道を歩んだイスカンダルのように、己の決めた道を己のやり方で貫き通す、その生き様がある意味では王に似ているなと、会場を埋め尽くす1800人のファンを3階席から眺めていて思いました。


王というのはフィクション的な例えだとしても、私が見てきたAqoursのリーダーとしての伊波さんは、その背中に憧れるに足る勇姿を示し続けていました。例えば、シブヤノオトで見せた、Aqoursの4thライブ開演前メンバーにかけた声。Aqoursの4thライブ2日目のダブルアンコールで会場に満ちた灼熱の想いを束ねる表情。Aqoursのリーダーとしての伊波さんを感じる度、その背中に決して羨れる事がないように、彼女を人間離れ、現実離れした遠い存在として見ていました。


ここまでが、イベントが始まる前までの回想です。


イベント内容の説明は割愛させてもらいます。
メルボヤに参加していなかった私にとって重要だったのは、今まで背中しか見れなかった(と思っていた)伊波さんが、役を脱ぎ、等身大で、ファンと向き合っている姿をその正面から見たということです。


いつも聞いているラジオのようにお便りを読み上げるのとは違い、客席のファンとインタラクティブに会話し循環する空気とコミュニケーション。それ自体は普通のイベントなのですが、ライブや演劇などのステージに役者として立つ姿しか伊波さんを知らなかった私にとっては、衝撃的な新鮮さでした。


逆説的にそういう、ファンとは向き合わずとも自分自身と向き合うような、ストイックな姿勢が伊波さんの魅力だったとも感じています。


ここから先はライブパートの話。


イベント名のSuper-pouvoir。
フランス語ですごいパワーだという意味そうです。


このイベントはオリジナルのペンライト以外使用禁止で、私は物販でペンライトを買うこともなく仁王立ちの地蔵になる事を決めていました。


ペンライトには名前が付いていました。伊波さんの人格の一面を切り出した記号であるかのように。


My COLOR's ~Angel~
My COLOR's ~Power~


ライブの内容も、曲によってAngelとPowerを歌い分けており、ファンもペンライトや色を使い分けていました。

 
伊波さんは歌声や演技の幅、バリエーションもさることながら、何よりもヤバいのはそのスイッチの切り替えの速さだと感じます。人格をどこまで深く切り分けて、切り替えているのか。畑亜貴さんはプリセットという言葉を使っていましたっけ。3rdの円盤DISC6特典映像、埼玉の開演前と福岡2日目MW後を見た時は、やっぱり彼女も人間なんだなと、しかしだからこそ、人にはここまで恐怖や緊張と立ち向かえる強さがあって、自分を殺す事も書き換える事もできる力があって、その力をここまで使いこなせる人がいるのかという感動を覚えました。

 

そしてライブパートで歌われた一曲一曲、その全てが魂の重さを持ち、槍のように研ぎ澄まされ、心臓を炙るような炎が込められていました。歌声に宇宙線でも乗せていたのでしょうか。特に英雄やサムライハートはブッ刺さりました。地蔵とか無理。

何を言っているのか意味が分からないという方は、NamiotoO vol0.5か、4月15日から受注販売受付が始まる、LIVE映像付きメモリアルブックレットをご購入ください。(ダイマ


そんな歌声に心を震わされる一方で分からなかったのは、彼女がこのイベントに込めたメッセージです。普通に考えれば、物販、トークパートのコーナー、選曲に至るまでの随所に、彼女の想いとこだわりが込められているはずです。


伊波さんのイベント前日のブログでは、楽しいとすきを詰め込んだと言っていました。
https://lineblog.me/anju_inami/archives/1587435.html


彼女が何をこのイベントでしたかったのか、ファンと接したかったのか、自分を見て欲しかったのか、それとも他の誰かに何かを届けたかったのか、私には分かりません。彼女が度々口にする「愛と想いやり」にも、恐らく文面以上の意味が込められているのでしょう。


とにかく、このイベントには何かしらのメッセージが間違いなく込められていたにもかかわらず、私にはそれが何なのか分からなかったし、敢えて分からない程度の距離でいようとも思いますが、他のファンの方はこのイベントをどのように受け取っているのかというのはとても興味深いと思いました。


最後に、発表パート。


実はイベントが開催された3月31日、その翌日には私が転職して初めて出勤する日が控えており、めちゃくちゃな不安と緊張を抱えたままイベントに参加していました。


それでも発表の一発目から「私の頭の中の消しゴム」の舞台発表を持ってきて、彼女がまた一歩道を歩む姿を示されて、俺もこうしちゃいられないなと励まされ勇気をもらいました。


彼女を消費してはいけない。頼ってはいけない。
彼女はただ彼女の道を歩んでいるだけなのだから。


そう思っていたのに、頑張れとか逃げてもいいとか、MCでそんな言葉を投げられたら、救いを求めてしまうじゃないか。


最後の方はもう抑えきれなくなってありがとう絶叫botになってたら、終演後だってのにファンに応えてステージに出てきてくれるし、どれだけ俺の心は灼かれるんですかね。


あの日受け取ったものを行動に変えたいと思っていたらこんなブログを書いてました。

 

ありがとうございました。